Ica

薔薇マリ

色々と13巻妄想してみた

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「ヨハンの死体は…なかった…?」

喜びそうになった。口角があがる寸前で、羅叉の表情が目に入った。

羅叉は、喜んでなんていなかった。苦渋に満ちていた。その眉をよせて、普段よりさらに深く眉間にしわをよせて、唇をかんで、戦慄いていた。

ああ、そうだ、そうか。

ヨハンは連れ去られてしまった。あの男に。あの男に!子供をすでに抱えていた妹を隊員の前で犯して、私たちに宣戦布告したあの男に!その様子を見せつけられた隊員は泣いていた。泣いて、泣いて、殺してあげて下さいと頼んだ、すがりついた。けれどあの男は殺してなど、くれなかったのだ。

「じゃあ……ヨハンは……」

今、一分一秒、私たちがこうしている間にも、ヨハンは。

ヨハン。俺は、貴様が嫌いだ。三番隊の隊員に聞いた。フォールを逃し、隊員を逃し、貴様はたった一人であの男と対峙した。その強さは人を超えていたと言っていた。そうだ、貴様はそうやって、先代のところまで少しずつ到達しようとしているのだ。ひとりで。隠れて。戦闘になると鬼神のごとき強さを発揮して、人間を超えて。あの場所へ。なのに、だというのに。貴様は自分のことは二の次だ。貴様がいなくなればどうなるのか、分かっているのか。何も分かっていない。何もだ。フォールは、すでに呆然自失だ。隊員たちもなんとも言えない複雑な顔をしている。陰口を普段叩いていても、貴様が組織のことを第一に考えていて、誰よりも努力していて、そして最後に自分たちを身をていして守ってくれたことをわずかだが理解しているのだ。何故貴様は今ここにいない。傷ついたフォールを抱きしめてやれない。俺が抱きしめても、フォールは何ひとつ満足できないのだ。ここで震えているのに。泣いているのに。つよい女だ。だからお前もフォールを好きなのだろう。そしておれも。

あんな男に蹂躙されて、気高いお前の魂が堕ちることはないと信じている。けれど、そうだ。こんなことになるなら──

あのひねくれた太陽を、一度、抱いておけばよかった。

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「どうかなぁ、ヨハン、今、我輩とお前がwth!!together!ひとつになったんだよ!このSIX様をおおおおおひとつになって、幸せだろう?悔しいだろう?あのおちゃめひげ野郎を殺した俺に犯されて、弄ばれて、なすすべもなく生娘のようにその胎に我輩の悪魔の塔を受け入れて、その姿凄くサヴィッジに!!我輩をズキュゥゥウンと響かせてるぜええぇぇ…ku・ku・ku・Hyaaa…!」

そのままねっとりと舌を絡ませて、その舌をかんでやった。つぷ、と血があふれてけれど、けれど。

「その瞳!!!アァ~…ヨハァアアアアアアアン、お前は最高だよ!!ジャスティス!他の秩序の番人はもうそろそろねぇ、とっくに!色を失うんだよ!ところがお前はどうだい、気高い!!なんてこった!まさかこんなにとはね!凡人がよくここまで来たものだ!」

ひゅーひゅーという音はどこから聞こえてくるのだろう。さきほどSIXにほぼ食いちぎる勢いでかまれた喉笛か。だが軽いものだ。声は出せる。出せるが、出さない。出してなどやらない。悲鳴などあげない。叫んだりしてやるものか。泣くなど、喘ぐなど、懇願するなんて、殺してほしいなんて。言わない、いうものか。言ってやらない。フォール、フォール、きみは一人で寝るのがさびしいといった。おれは答えなかった。あのとき君に答えなかった、はぐらかしたこの口が、もう一度声を紡ぐのはきみへの愛をささやくときだけだ。好きだ。だから愛している。きみは強い。俺がいなくても、なんどだって立ち上がるだろう。願わくば、願わくば彼女が幸せであるように。

幸せになりますように。

「かわいいなあ、ヨハンお前は可愛いよ。自分のことを犠牲にして隊を守った!だけどどうだい、お前は誰にも守られていない。だから我輩が愛してあげるよ!!どこまでも深く!DEEPに!深く!愛してあげよう!奪ってあげよう!その想いも!瞳も!平凡で糞覚えにくいが屈辱にゆがむとセクスィーになっちまう顔も腕も手も足も首も肩もひざもひじも全部全部全部我輩が奪ってあげよう!これが愛だ!!LOVE MAX!!!!ワォ!睨むなよ!駄目だイっちまうかと思ったぜ…!その視線だけは凶器だなぁヨハン!いや違う、我輩の凶器を、さらにビンッビンにしちまうつまりかい!もっと太く!もっと硬く、もっと激しく?!」

唇からこぼれているのは赤いものだけではない。白いものもまざっていて、口の中が不快だった。

瞳がなめられる。けいれんを起こした瞳が勝手につぶろうとするのを、その陶磁器のように白い腕が止めた。ぼろぼろと涙があふれるのを見て、奴は笑う。楽しそうに。

「我輩の、素晴らしい、高貴なる、種を、また注いであげようヨハン…!!ドッピュゥ!ってね?」

意識を失うことすら、許されないのだ。だからおれは何があっても、つぶされても、最後の瞬間まで、くっさない。SIXを、睥睨する。おれの口が最後に紡いだのも、これから先紡ぐのも、ただ奴の名前だけだ。君の名前は呼ばない。こんな男の前で口に出せば、高貴なるきみが、けがれてしまうから。

だから、こころのなかでだけ、よんでいいだろうか。

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面接いってきます!もうとりあえず、ヨハン、しなないで!