Ica

小話多ジャンル

タイトルを考えるセンスがゼロな伊藤ですが、そのせいか、いや当然、むしろ必然、お題サイトを見るとときめかざるを得ない

お題にそっていろいろと考えられるし、

このお題あいつらにぴったり!とか

何とお題でストーリーを考えられるんですよ!お題ってすげぇ!と思っている

という訳で厨っぽい感じに何個かかりてみた

選択式御題さまより。

SSSSSくらいの短さでGO

◆ ◆ ◆

薔薇マリ。

 ヨハ→フォ。

きみが好きだと言えたならば、おれは少しは甲斐性のある男、ときみに言ってもらえるのだろうか。

この世界で、命を落とす確率は高すぎて。

おれはきみが好きだと告げることがまだ出来ない。

だって見てきたからだ。

好きだ、と何度も言って、ようやく結ばれて、その矢先に死んだ…かれらのことを。

おれはその姿を見るたびによくわからない気持ちに飲み込まれそうになって、荒くなった息と動悸を隠したかったのだ。

だからきみが好きだと何度思ったところで、口にはしたくない。

誰か一人の気持ちがこの世界から消えたところで。

おれの気持ちをここで握りつぶしたところで。

きみの気持ちを、いくら踏みにじっていたとしても。

おれは自分でも笑えるくらい、保身に走ろうと決めたのだ。

傷を飲み込んだの日

(きみとおれの傷を、塗りこんで塗りこんで、隠してしまえると思ったんだ)

◆ ◆ ◆

FHC。

 ロナードとザード。

なぁロナード。お前の胸に、何かつきささってたの、俺は見たよ。

屈託なく、相変わらずの悪ガキのような表情で、彼はなにを言うのだろう。

逆立てたその髪型がまたいかにもらしさを出していて、ロナードは嘆息をついて、自分の胸のあたりをさすってみた。

勿論、なにもない。

とん、と胸にまた新たにたった指は自分のものではない。

自分がうつむいた隙に近づいてきていたザードのものだ。その指は銃をかたどっていた。

そんないたそうなの刺したままじゃ、見てるこっちが辛いから。

これでいっそ撃ち抜いてやったほうがいいんじゃないかと思って。

ザードの言葉はどれもこれもが暗号じみていて、まったくわからない。

だからさロナード。

その声を遮るように、その指を掴んだ。

「悪いがザード。俺はその…特にお前から、そんな哲学じみたことを言われても、何が言いたいのか理解が出来ない。…全然」

「あれ、本当にわかんねぇ?」

途端、芝居がかったザードの空気が消えて、目を瞬かせたいつも通りの瞳がのぞく。

「ああ」

ほかの誰かならいざ知らず、ザードから、というのも要因だ。

「そっか。俺ら結構付き合い長いからどうかと思ったけど、そうだよな。

 人の気持ちなんて、きちんと言わないと分かんないよな。」

「──」

その時になってようやく、ザードがなにを言いたかったのかわかったような気がした。

慈しむようにその花を。

手折らない様に間違っても。

ずっと見ていたザードと、目を奪われたロナードの。

苦しい気持ちなんて知らないで、お互いの金糸の髪をくっつけて、あいつらは笑っている。

「でもそれでも」

叶わなくても伝わらなくても、俺はいいんだ。

いつもの子供っぽさを消してしまって、ザードは笑って。ひとつだけ思い出したように付け加えた。

「ロナードは、痛そうだったから」

この痛みを、お前はずっと抱えてきて、それをこれからも持っていくのだと思うと、ロナードはザードの言った通り、何か胸に突き刺さったような気がして、少しだけくいしばった。

それが倖せなんだって馬鹿のひとつ覚えのように今日もお前は笑っているのだろ う

◆ ◆ ◆

探偵学園Q

 七海と団。

彼の最期を看取ったように俺の最期も看取ってください

それはもう余命いくばくもない患者が、孫が見たいと言い出すような、その時に途方に暮れてしまう親族のような気持ちを持たせる言葉だった。

顔を向けると、自称自分の右腕、の七海はいつも通りの表情をしていた。どうしようもなく悲観に暮れたわけでも、悲壮にくれているわけでもなかった。

だから、一瞬、聞き間違えかと思ってしまったほどだ。

「俺は、」

ただひかれた口から出る言葉だけは、苦しいほどの想いをこめて紡がれているのを。

せめて自分は、最後まで覚えておきたいと思った。

◆ ◆ ◆

 ひろゆき

赤木しげるが死んで、もう何年たったのだろう。記憶力だけはいい。勿論覚えている。

自分は、あの日のことをいつまでたっても、鮮明に覚えている。彼の一言一言を、じっくりじっくり刻んで、それを自分のものにした。意味のない独占欲だった。あの場にいた全員が覚えている言葉を、自分だけのものにした。二人で相対した時のことも、忘れなかった。忘れられるはずもなかった。

好きだった。

あの屈託のない人が、どうしようもなく、好きだった。わがままで、自由奔放で、神がかり的な人で。

記憶の中のあの人が、いつも笑っている。それだけが救いだった。

「赤木さん」

本当は、会いたいです。

口には出さずにほほ笑んだ。また、天さんをさそって、墓参りに行こう。

あなたにえないという病

◆ ◆ ◆

FHC

 ハントとグラッフル。

「グラッフル、」

「なんだよハント」

「またこんなところで遊んでるのか」

「遊んでんじゃねえよ。我が船ながら、セイントローズは広くて立派だからな。つい探検したくなるんだよ」

「それで迷子になったことがある奴がなにをぬけぬけと…」

「いやでも、お前が見つけてくれるだろ?」

「そりゃ運よく見つけられたけどよ」

「どこにいっても、どんな場所に消えても」

「グラッフル?」

「俺は空にいるから、お前は目を細めて太陽を仰ぎ見るたびに、俺を見つけられるだろ?」

「何だ?空に散るってか?…演技でもねえ」

「ああ、ほら、新しい機能つけたんだ。このボタンをおすと」

「おー…空が見える」

「ガラスにしたんだ天井。流石にいつもじゃ眩しいからスライド式だけどよ」

「蒼くて綺麗だなー」

「そうだなあ」

「お前どっか行くのか?」

「そうだなあ」

「約束忘れてないよな」

「…そうだなあ」

「おい」

「さて、どっちでしょうか」

「……つきあってらんねーよ」

まぶしすぎたあおさ このあおにおまえはとけるのか

(予感だけは、ずっとそこにあった)

◆ ◆ ◆

ぼく地球

 輪と紫苑。

わかっているだろう。わかっている。何よりもまずキーワードだ。ああ。だがそれがあるからと言って、お前は俺の言葉を拭うことはできない。何でそんなことわかる。俺はお前と違って、目的がある。目的。

復唱した。紫苑はそうだ、とその表情を変えることなく輪を掴む。

木蓮を…木蓮が愛したこの星を。

自らの手で、コントロールするなどと。

そんなの、輪が絵本で見たことがある宇宙人の侵略に他ならない。

けれど何度言っても、紫苑は聞き入れないし、生きた年齢の差が輪を追い詰めていく。

木蓮が愛したこの星。

ありすが愛している地球。

守りたい、という意識は同じはずなのに。

まだ七歳の輪の意識は泥のように引きずられていく。

俺は、生きている。

紫苑と違って僕は生きていたんだ。

その核心は日を追うごとに消えて行って、輪は自分が生きているのか、死んでいるのかも分からない。現実は夢のようで、月基地の夢のほうがよほど現実味があった。

ふわふわと宙に浮いているような気持ちで、それでも輪と紫苑が重なることはできなかった。

幸福な結末など いらない

どうやって生きながらえたって、自分はもう死人なのだから。