修羅の刻
吸血鬼と戦うかっこいいお話がかきたい、って思った。
修羅の刻で吸血鬼パロをやりたい!とまた短絡的に考えた。
だけど陸奥は最強であってほしい。ただ、魔力とかそういうのはなんか微妙。吸血鬼ハンターだったとしても。
さりげなく修羅の刻に吸血鬼をまぜてみるか…?吸血鬼を無手で、普通に人間のままで倒す陸奥。お、どうだ?かっこいいか?
陸奥園名流は無手にして、最強。生れてより数百年、ただの一度も敗北を知らず。
その陸奥はある者たちにはこう呼ばれる。
──守護者。
奥州の守護者。そう呼ばれていた時代もあった。だが違う、けれどそれも違う。陸奥は自ら守護者になっている訳ではない。ただ結果的に守護を果たしているということになる。兵と闘い、勝利する。その繰り返しの過程に、そいつらが存在していただけだった。
それらは、生きるために人間を糧にすることもある。しないこともある。ただ君臨するだけで畏怖され、その能力は人間など及ばない。
それでも、幾度の闘いの中で、陸奥に敗北しているのだ。
「そういう話を、聞いたことがある」
「……十兵衛」
闇夜のふける草原で、十兵衛が木々に寄りかかってそう語った。朗々とした語り口調に、天斗は眉を寄せたが結局黙って最期まで口を閉ざした。…うすうす、勘づいていたからだ。
これは宿命だ。陸奥を滅ぼそうとするものと、陸奥の名を継いだものの。
たとえその男がどれだけ陸奥に、いいや天斗にとって価値があっても、だからこそ奴らにとっては格好の餌食だったのかもしれない。
「天斗、勘違いするなよ」
口の端からのぞく犬歯は、鋭すぎる。
「俺は、てめぇを全身に至るまで、犯したいから自分からなったんだ」
「嘘だな」
「あ……?」
「だったら、てめぇの体が、くせぇのはなんでだ」
暗くて常人には見えぬ色がある。天斗にもうっすらとしか見えない。しっかりと感じるのは嗅覚。十兵衛の体についた、返り血のにおい。
闘ったのだ。十兵衛が闘い、敵を斬り伏せ、それでもなお、病み上がりの上に片目を奪われたのでは圧倒的な数のそれらに屈するしかなかったのだ。瞳の奥に、まだ十兵衛は残っている。あんなやつらが、この男を屈せられるものかよ。…口車に乗せようとして、瞬時に断られたに違いない。
「俺は、柳生十兵衛と闘いてぇんだ。てめぇらみてぇなくせぇ奴らは…」
ザッ。足を開いて、構える。ここからは人の闘いではない。守護者、と奴らは陸奥のことをそう呼ぶ。けれど陸奥は人間だ。ただその身に──奴らにとっては毒になる血が入っている。
「失せろ!!!」
ごぅ。天斗が蹴るのと、十兵衛が消えるのは同時。見えない。陸奥の眼をもってしても見えぬその速さ。
(見えないなら…)
後ろだと相場は決まっている!
紫電。後ろ回し蹴りで頭を狙うと見せかけての金的だが、十兵衛に防がれる。逆にがっちりと太腿で足を挟まれて引っ張られる、前に自分から飛んだ。抑えてくれたというなら、それを足場に残った片方で蹴るのみ。
顔を蹴る。受けるしかないだろう、それに、十兵衛は牙をむき出しにしてかみついた。
ガリッ。
噛まれた。足を、その牙で噛まれた。普通なら、これで終わっている。
「……きかねぇよ」
これこそ、陸奥が奴らと渡り合える最大の理由。
「吸血鬼の血を、陸奥は受け付けない」
血を吸われたら吸血鬼になり下がるというのは本当だ。そして尋常ではない力も出る。なれど、陸奥には、陸奥だけはいくら吸ったところで人間からおとすことができない。支配も不可能。更に、人間を捨てた吸血鬼たちさえ、その生身のまま倒してしまうのだ。
それゆえに、人類の守護者。
それゆえの、不敗。
無理だった。
全然無理だった。もうどうしようもなかった。おい、十兵衛!って感じだけどだからってオリキャラまみれにするのも無理だしそもそも吸血鬼と戦ってるくせに、戦いが普通すぎるし。
私はこう、魔方陣ガガガーンみたいなのとか、そういうのやりたいような気がしたんだけど、それならそれで陸奥でやるのは無茶なような気は、自覚している。
よし、こうなったらこれでどうだ!舞台は思い切って、ちょっとしたファンタジー!吸血鬼が存在して、それらを倒す吸血鬼ハンターの組織、協会が存在する。大衆は吸血鬼は伝説程度だと思っているが、闇では吸血鬼と吸血鬼ハンターが日夜死闘を繰り広げている。
だが、吸血鬼と協会、どちらにもかかわるな、といわれる一族が居る。
それが陸奥。
彼らは協会がなしえない吸血鬼の倒し方を会得していて、それでいて、時に教会とも対立する。
陸奥が求めるのは、強いものとの闘いだけなのだ──!
みたいな
「最近、とんでもない化け物が出るって噂がありましてねえ。嘘だと思いますけど、旅の人ですか?気をつけてくださいよ…あっちには教会もあります」
誰もが知っている畏怖の化け物は何であるか。されど誰も姿を見ていない化け物は。
誰も知らないのにだれもが知っている。噂は蔓延していく。
「ああ……教会か。爺さん、良いこと教えてやるよ。……火のないところに、煙は立たない」
「はぁ……」
ならば結論はただ一つだ。
居るのだ、それは。大衆に気づかれずに、才能のあるものだけが集められその職業について、人類を守護する。しかし実際はどうだろう。殆どのものがその闘いの中命を落としていく。苛烈な争いの中で生き残るほどの力をもつものは、少ない。『教会』はあまたの人材を育て、あまたの人材を失う。『長老部』は時にその命を囮に使うこともある。戦死は名誉である──それが、合言葉だ。
何十年かに一度、天才が出る。周りをぬきんでて圧倒し、『吸血鬼』を抹殺する。
ただ、長老部が唯一口をふさぐ存在がある。
それが、陸奥…園名流だ。
とんでもなくまた陸奥が謎な存在すぎる。
て言うかもう、吸血鬼やめたらどうかな、私。という結論になった。
全然無理だった。ほんとすみませんでした。