Ica

薔薇マリ文/ピンカタ

ボンジさんに甘いピンカタリク頂いてたんだけど、二千字とかほんとリクとしてあげるには申し訳ない文字量だからお蔵入りにしてたピンカタ、続きはかくかもしれない とりあえずあまあま

いつまでたっても共通語が苦手な我がクランの頑張り屋さん兼癒し担当の為に、最近はいつになく平和だから共通語を教えてあげようの会を立ち上げたのは他でもないお祭り好きの半魚人。全く本当にせわしないなぁとぼやきながらその会員にしっかりぼくも入っている訳だけど。ほら、魚なんかに共通語の指導を任せてたら、ぼくの癒しが変な言葉を覚えて帰ってきちゃうかもしれないし。それだけは阻止しなければいけないと心底思うわけで、別に貴族たちのおたしなみのような家庭教師のようなものでなく、何せぼくもカタリもピンプもそれほど毎日会う訳でも予定が一貫している訳でもないので気が向いたら一日がっつり教えたり、一週間くらい何もしなかったりの繰り返しではあるがとりあえず、つまりそういう活動な訳です。別名、ぼくのぼくによるぼくの為の癒し時間。

「ピンプ、ほら、ワシがカタリや」

「って、そんなことくらい知ってるに決まってるだろ!何雰囲気に流されてるんだよ!」

今日はピンプの部屋で、カタリもぼくもすることが無いからのんびり談笑しながら共通語の授業をしているのだが、ピンプとカタリはベッドの上で向かい合いながら単語などを教えている。ちなみにぼくは持ち込んだ机で、ピンプの為に筆記の練習ノートを作っている。案外、こういうのは嫌いじゃない。

「分かって・マス。…カタリさん」

ふわりと。

ピンプがその名前をあまりに嬉しそうに目を細めて口に出すのだから、何だか恥ずかしくなってしまった…のはぼくだけの様で、馬鹿で単細胞で脳みそちっこい学習能力皆無なカタリは嬉しそうに頷いている。動物を手なずけているみたいだ。

「アレがマリアローズやでー」

「マリア・さん」

分かっていることを、どうしてそう!…って叫びそうになったけど、ピンプが本当に、あんまりにも楽しそうに喋るからぼくも何にも言えなくなってしまった。ぼくがこの世で一番弱いのはピンパーネルだ、間違いない。あ、いや、勿論ユリカの舌足らずな口調でお願いなんかされたら鼻血を吹き出して倒れてしまいそうになるしあのサフィニアがちょっと頑張ってアタックしようとしていて顔を真っ赤にしているところなんかを見ると自分でも知らない一面が顔をのぞかせて太腿の出し過ぎ何かをからかいつつ撫でたくなっちゃうとか…いや違う、ぼくってば変態では無いんだけど、単にみんなが好きすぎるんだ。ただ、カタリは何をしてても大体殴りたくなっちゃうんだけど、これも愛の鞭だ。そしてその中で、ピンプだけは抱きしめるとか撫でまわすとか殴るとかそんなことは到底出来ずに可愛いなぁと内心滾るだけで我慢してしまうのだ。うう、可愛いなあピンパーネル。

「よし、今日は、名付けて愛のレッスン編や!好きなおなごが出来た際に何も言えないんじゃ男の恥ッ!」

…ピンプなら、あの優しい笑顔で微笑んでるだけで大抵の女の子はとろけてしまうと思うけど。

「りぴーと、あふたみー!『ハンカチが落ちてましたよッ!』」

「り、りぴ…?」

「って、おい!」

つい、手が出てしまうような発言にピンプは困惑しているしぼくとしてはどこから突っ込めばいいのやら、いやもう、全部突っ込めばいいのか。

「なんでそんなベタベタなシチュエーションからなんだよ!どう考えてもないだろ!大体文章長すぎ!困ってるじゃないか、もっと初歩的なところから行かないと駄目だろこの生臭脳!」

「すまん!…って誰が生臭脳やねん!わしの脳みそが生臭いかどうか何てわからんやろ!」

ぎゃあぎゃあと一通り口論した後、カタリの生臭脳もようやくぼくの正論におされたのか、しぶしぶ、と言ったていで、しかし直ぐに持ち前のポジティブさを発揮してこほんと咳払いをしてのけた後、

「……『好き』や」

…成程、わざわざ長文にした意味がわかった。

恥ずかしいのだ、これ。

どうしてかぼくまで居た堪れない。何だこのお見合いに割り込んでしまったような気分。

「私も・デス」

目を細めるピンプの破壊力と言ったら!

「あああああああ、いや、その、復唱してな」

「そそそそそそそうだね、ピンプ、語尾は真似無くていいからね」

動揺してぼくもカタリもわったわただ。

「す、『好き』、や」

「『好キ』」

「…『好、き』。口を開いて、すぼめて」

「『好き』」

「『好き』、やで」

「大『好き』」

「ぶふっ!」

いつもの通り復唱大会をしていたのだが今回は何だかカタリも少しだけ気恥ずかしそうに目をそらしていたのだが、ピンプの応用力に吹きだす。ぼくも何というか、え?みたいな。吃驚しすぎちゃって一心不乱に、主にベッドの人たちの変な空気を気にしないように書いていた手が止まっちゃ…わざるを得ない。

「あ、え、ええと、ちょっと応用な、うまいやん!」

そうだね、流石ピンプ!若干だけ脳みそがさっきの事態を拒否しそうだったのだが、そうだ、ピンプの成長ぶりに泣くべきだここは。『大』をつける場所が的確だ、的確すぎるという意見もあるのだけど。流石ピンプ、ブラボーピンプ!!

「『私は、あなたが好きです』」

「私は、カタリさんが・好き」

ぼんっ!!

…いい煮魚が出来ました、と。

「わ、わしも、好きやで」

と、ピンパーネルが急にカタリと一緒になだれ込むようにベッドに倒れた。え、ええええええ?!!?!な、何々何々?!?!?!

「不潔者デスが、よろしく・願います」

って、それを言うなら、不束者です!!!!!!!!!!

カタリとは違う元気な脳を活用してこの状況を理解しようとしてぼくは一つの結論に達した。

あ、あれは前にピンプにカタリが教えた最上級のお願いの仕方、と言うか謝りの『ドゲザ』のつもりなのではないだろうか…!

「ピンプは不潔やないで?」

きょとんとして、ピンプのさらさらの髪を押し倒されたと言える状況のまま触ってるカタリも、クエスチョンマークを浮かべているピンプも、なんかもう、兎に角、恥ずかしかった。

「も、もう…愛の告白編は…やめよう」

かろうじて漏れた台詞が、いちゃいちゃな空気を醸し出している彼らに伝わったかは、また微妙な話し。

ほんとマリア視点はかきやすい